【経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス】炎上するフリー演者とパチンコホールがそれを回避する方法(3)

「目立ってなんぼ」のフリー演者を起用する想定外のリスク

 

P業界も他人事ではない
大手企業のコンプラ意識とは

 ここで、とある大手企業に演者を来店させる場合のフローを聞いてみた。店に演者を招く場合は、基本的に店長が呼びたい演者を上奏するが、本部側がリストアップした人選の中から選択する場合もある。リストアップされている演者は、契約・取引のある代理店経由で呼ぶことができる。ルートはいくつかあるが、最終的には店長が呼びたい人を稟議・承認するという流れだ。

 当然同社では反社チェックにも余念がない。基本的に取引をする場合に、個人事業主やライター直ではなく、代理店経由となる。その代理店に対してのチェックを行っており、ライターと直接支払いが発生するというようなことはない。直接取引をしない理由については、次のように語る。

 「弊社では取引をするにあたっての条件として、取引先登録などや法人の反社チェックという条件があります。個人事業主でも法人化されていれば条件次第で取引が可能になりますが、それでも代理店などからの紹介が必要だったり、反社ではないことの誓約書を書いていただいたりする必要があります。ですので、取引は基本的には法人化されているところです。これらはコンプライアンスを徹底するためで、演者さん以外の例えば備品購買などについてもお取引先に条件があるので、そこで徹底管理しています」

 さすがの対応である。同社のようにホールと演者が直接取引をするケースというのはさすがに減りつつあるようで、別のホール企業では、すべての演者を来店させる際、朝入店時に法令、同社のルールを遵守、理解をした上で撮影などを行ってくださいといった旨の書面をわたし、必ず一筆書くように徹底してリスクを回避している。取引をする上では、機密保持契約などを取り交わし、企業対企業のやりとりをかわすのだ。

 これはフリーの演者やインフルエンサーを問わず言えることではあるが、もしそのような契約がないまま来店のオーダーをしてしまった場合のリスクをまず考えなくてはならない。お店としては、広告宣伝をかけるため、出ている、または出すコーナーなどを事前に演者に伝え、そこをアピールしてほしいといったオーダーをすることもあろう。だが、これは言い換えれば、設定情報など会社の重要な機密情報を外部に伝えるということでもある。

 個人を起用する場合、その人たちがやりとりの裏側を絶対に漏らさないという確証はない。むしろ、契約を切ろうとした瞬間に、彼らが店長から受け取ったメール、DM、LINEのスクリーンショットをネット上にバラまいてしまう事態もありえない話ではないのだ。

 これを回避する方法が企業対企業で契約書を交わすこと、またはすでに契約書を交わしている信頼に足る業者に直接オーダーをすることだ。契約書なしにフリー演者や業者を起用するということは、その瞬間は良くても会社が傾く可能性を存分に秘めていることを忘れてはならない。これは事前の準備で取り除けるリスクだ。

 パチンコホールは業界環境が悪くなったとしても大企業に等しい売上がある。しかしながら、すべてのホール企業が大企業のような対応を取っているわけではない。演者の人気や持っている数字だけで判断するのではなく、なんでもありな時代だからこそ、今一度信用という言葉を見つめ直す必要がある。
 

とある大手企業の例では、演者が来店する際に必ず入店前に、ルール(法令やモラルなど)の
確認と念書の意味をこめて一筆書いてもらうことを課している。

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