【経営者にこそ読んでほしい企業コンプライアンス】炎上するフリー演者とパチンコホールがそれを回避する方法(2)

「目立ってなんぼ」のフリー演者を起用する想定外のリスク

 

元でちゃう!演者が起こした
あの有名な事件も

 こうした事例は、個人のコンプライアンス意識の低さから引き起こされるものであり、その責任を負うのは所属する組織や会社などだ。内容によっては企業が個人に対して損害賠償を行うケースもある。パチンコ業界でもそういったリスクは皆無ではない。

 でちゃう!の元演者で、黒木レンという名義で活動していた人物が起こした事件も有名だ。無免許かつ飲酒運転をしていた友人の車に同乗した際、衝突事故を起こした友人をかばうために「自分が運転していた」と虚偽の申告をしたことで、犯人隠秘の罪で逮捕された。

 さらにその友人が問題だった。過去に死亡事故を起こしたことで運転免許を取り消されているだけにとどまらず、別の事件でも有罪判決を受けて執行猶予中であったという。当然所属事務所もすぐに契約解除し、この事実を知ったtriple a 出版も即座に同事務所との取引を停止した。当の本人は名前を変え、現在はフリー演者として活動している。彼女を来店させているホールがその事実を知っているのか定かではないが、知っていながら呼んでいるのだとしたらそれはそれで問題と言えるかもしれない。

 一方、現在はフリー演者として活躍しているエース小吉氏も直近で騒ぎを起こしたうちの1人だ。

 ハナハナの筐体のハイビスカスの部分に自身のシールを貼り付けて遊技をしているところを、別の業界人から「無承認変更になるおそれがある」と指摘されたのである。これもたぬかな選手の事例と少し似ており、一般ユーザーが告知ランプの部分をおしぼりで隠すなどはよく見られるシーンだが、最悪の状況を考えれば、ホールが無承認変更で処分をくらいかねない。それをホールからギャラをもらって派遣された演者がやってしまうのはいかがなものだろうか。

 炎上した事例はまだまだある。主にTwitterで活動しており、ホールの特定日や「どの機種が狙い目」といった営業の内容まで踏み込んだ情報をツイートする晒し屋と呼ばれる業種人たちだ。2万人のフォロワーを抱えている「ぎゃるちゃん」という名義のアカウントが起こしたのは、ユーザーに対して「この機種が狙い目」と情報を流しておきながら、自身は身内の仲間を引き連れて別の全台系機種を独占。晒し屋は演者とは違うが、フリー業者の〝自分が目立つためなら何でもあり感〟はいかにホールがクライアントといえど、なかなか御すことが難しい。何より、そんな人間が出入りしているホールというのはユーザーに不審感を与え、店の信用問題にもなってくるだろう。過激にやって人気を得たいフリー演者を呼ぶからにはホールも相応のリスクを背負う必要が出てくるが、「出ていなかった」などと後脚で砂をかけられるようなこともしばしば見られることだ。

 こうしたトラブルはお店を営業している以上つきものだが、パチンコ業界全体が健全化に向けて突き進んでいる中で、フリー演者の方がリテラシーが低い割合が高いというのは実態としてあるかもしれない。個人で活動するYouTuberの動画が過激化するのを見れば分かるが、彼らは面白くてなんぼ、目立ってなんぼの世界に生きている。その精神は否定されるものではないが、取引をする相手としては一線を引く必要があるのかもしれない。

契約書を交わさずに得体の知れない演者や業者を起用した場合のリスクは非常に大きい。

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