100年安心って誰が言った?年金神話の真実①【FP王子の知っトクお金の秘密】

2020.01.15 / 連載

年金問題に消費増税。膨らみ続ける金融不安や悩みなど〝お金のアレコレ〟に人気ファイナンシャルプランナー高橋成壽が斬りこむ!

ハリボテの年金神話を作り上げる「数字のマジック」【前編】
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ハリボテの年金神話を作り上げる「数字のマジック」【前編】
どんなに良くても減る年金

世間を騒がせた「老後資金2,000万円問題」。先月の連載ではこの問題の解説と自分たちでできる準備についてお伝えしました。
「老後資金2,000万円問題」を自分の事として捉えるときに欠かせないのは、将来自分は年金をいくらもらえるのかという点です。そして、将来いくらもらえるのか?を考えるときに参考にすべき資料があります。それが5年ごとに発表される財政検証という仕組みとその結果です。

今回はその「財政検証」についてお届けします。

 

手取りの「6割」支給から『5割』支給へ実質〝2割〟減

昨年8月に公表された2019年財政検証の中身は、各方面へのいろいろな忖度が働いたのか、無難な内容に終始している印象です。
例えば、50年後の出生率が1.35から1.44に上昇。平均寿命は男性84.19歳から84.95歳へ、女性は90.93歳から91.35歳へとやや上昇しています。この結果、高齢化率が低下し40.4%から38.4%となりました。つまり、50年後は子供が増えることで高齢社会が改善される、という意味です。

また社会の中で働く人の割合である就業率が58.4%から60.9%に上昇。経済成長は〝控えめの推移〟とすることで、「目標ありき」との批判をさける狙いがありそうです。

目標ありきの経済成長モデル6パターン

財政検証の見通しは、6つの経済成長パターンを元にしたそれぞれのケースでの結果に分かれます。6パターンの基準を大まかにいえば、経済成長と労働参加が進むか否か、はたまた横ばいかの組み合わせです。
良い結果を生み出すには、経済成長かつ労働参加が必要です。すなわち、今まで働かなかった人たちが社会で働くことで消費が促され経済が成長する場合。一方、悪い結果は経済が成長せず、労働参加が進まない場合となります。つまり、人々が家にこもって働かず、消費が活性化せず経済が停滞する状況です。

実はいずれのケースにおいても、将来的に年金受給率の〝目標〟は変わらず、現役世代の手取りの50%を目指している形です。この現役世代の手取りを基準にした給付割合のことを「所得代替率」といいます。現在の所得代替率は60%程度ですから、高齢者は現役世代の手取りと比較して約6割の年金を受給している、ということです。
これが、25年~30年後には50%に下がります。

大切なのでもう一度書きます。年金の所得代替率は現行の60%から、25年~30年後には50%に下がります。
つまり、今より少なくなります。皆さんは、今の手取りが半分になっても暮らせますか?暮らせる人は特に問題ありません。しかし多くの人は手取りが半分になったら生きていけないでしょう。25年~30年後に年金はそのくらいに減ります。

金額は増えているのに減っている?体感ではわからない数字のマジック

でも実際のところ給付金額を大きく下げることはできないので、代わりに物価を上げます。本来、物価が上がったら同じ割合で年金額も引き上げないといけないのですが、物価上昇に届かない程度の引き上げに留めるのです。それを長期間、具体的には25年~30年間続けると、物価が上がり年金額も増えてはいるが「相対的には減っている」という状況が完成されます。これをマクロ経済スライドといいます。

このような〝相対的減少〟状態ならば、年金制度を100年近く維持できるでしょう。これが「100年安心」といわれた日本の年金事情の真実です。
年金制度は、実は非常にお寒い財政事情なのです。経済成長が続いて、労働参加が進んでも、行きつく先は所得代替率50%……。

 

今回は財政検証から読み解く年金神話の真実をお届けしました。
ちなみに財政検証では6つの経済成長パターンがあることをお伝えしましたが、中でも最悪のパターンではどのような状況が訪れるのでしょうか?これについては次回の後編でお届けしようと思います。


著者プロフィール
高橋成壽

慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融系のキャリアを経て2007年にFP事務所を設立。
超富裕層向けの資産保全サービスを提供する寿FPコンサルティング、富裕層向けの資産運用サービスを提供する寿アセットマネジメント、現役世代を応援するライフデザインセンターを経営。無料のライフプラン相談サイト「ライフプランの窓口」、無料のマイホーム相談サービス「住もうよ!マイホーム」、保険見直しサービスの「保険チョイス」を運営している。

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