利益を求めるために、稼働を求める

2019.03.23 / 連載

【日曜】ド底辺ホール復活プロジェクト
コンサルティングの現場より(206) 「&」の考え方

皆さん、こんにちは。アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社の林秀樹です。暖かい日も増えて、いよいよ春が近づいてきた気配を感じます。しかしお店の方はというと、なかなか客数が戻る気配が感じられず、「業界はいまだ冬」という印象を受けます。

3/10(日)の記事では「利益の確保が稼働につながる」ということをお伝えしました。「利益があるからお客様の満足度向上を図れるのであり、まずは適正な(必要な)利益の確保をしてほしい」という内容です。

ただ、利益の確保を優先するとは言っても闇雲に利益を求める営業では稼働の落ち込みを招いてしまいます。今回は、「利益を求めるために、稼働を求める」という考え方をお伝えします。

一日当たりの利益は「台あたりの粗利(台粗利)×台数」であり、台粗利の計算は、
・台粗利=玉粗利×稼働
なので、例えば台粗利として2,400円が必要だとすると、
・玉粗利0.20円×12,000発稼働
・玉粗利0.30円×8,000発稼働
・玉粗利0.40円×6,000発稼働
・玉粗利0.50円×4,800発稼働
というように考えられる組み合わせは無限にあります。このときに「利益を増やしたい」と考えた場合は、構成要素である玉粗利か稼働を上げれば必然的に台粗利は増えていきます。

ここで玉粗利を上げることを考えてみます。玉粗利はアウト1発当たりの利益なので、玉粗利を上げる=お客様は同じアウト数でより多く負けることを意味します。例えば同じアウト6,000発(1時間の遊技)だとして、
・玉粗利0.20円→1,200円の負け(0.20円×6,000発)
・玉粗利0.25円→1,500円の負け(0.25円×6,000発)
というようにこれまでと同じ時間遊んだとしても負ける金額が増えることが分かります。これではお客様の負担が大きくなるので稼働には悪影響がでてきてしまい、短期的には利益増加の効果が得られても、長期的には稼働の低下により「玉粗利×稼働」の掛け算の結果としての台粗利が下がる恐れがあります。

上記の計算で言えば、玉粗利を0.25円にするならば稼働は4,800発を下回ると台粗利は1,200円を下回り(0.25円×4,800発=1,200円)、その足りない分を補填しようとさらに玉粗利を上げて、一時的には1,200円を超えてもまた稼働が下がり、どんどん玉粗利が上がるループから抜け出せなくなります。

次に稼働を上げることを考えてみます。稼働を上げるということは、言い換えればお客様から支持される状況を作るということなので、
・店内環境を整備する
・店外に自店を訴求する
などの手法が考えられます。具体的には清掃、接客、ランプ対応スピード、わかりやすい配置、販促、広告宣伝、駐車場整備など「お客様に快適に遊技していただける環境を作ること」となります。これらは短期的な効果は見えにくいですが、長期的には「お客様の支持を得るための努力」なので必ず効果が出てきます。

利益を増やすためにできることは上記のように2つの方向がありますが、どちらがよりお店の将来のためにすべきことかは明白です。つまり、利益を増やすためには稼働を増やす努力が不可欠であり、だからこそ利益と稼働は密接につながっているのです。

利益を増やそうとした場合、これまではどうしても遊技機メンテナンスという手法を重視してきました。そしてそれでは限界がある(稼働に悪影響が出る)ので、リセットの意味合で新台入替やイベントで対処してきました。しかし、遊技機の魅力の低下やイベントの事前宣伝規制などでその対処事態に効果が薄くなっている現在、利益を増やすためには稼働に目を向けるべきなのです。

これまで、稼働向上を図ろうとした場合はまず「放出」を軸に考えたと思います。これは稼働の向上を遊技機メンテナンスで対処しようしているからであり、そのため利益の減少がセットになってしまいました。しかし今回の考え方では遊技機メンテナンスによる放出は考えないところがポイントです。遊技機メンテナンス以外でお客様の支持を得ることを考えて実行する、これによって稼働と利益のどちらも向上させる取り組みとなります。

「どちらか」ではなく「どちらも」、これからの営業ではこの考え方で取り組んでほしいと思います。「稼働を上げるためには、利益を取る。その利益を上げるためには稼働を上げる。」です。


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アミューズメントビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 林秀樹
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1972年生まれ、福井県出身。大学卒業後、遊技機販売商社勤務を経てパチンコホール企業へ。エリア統括部長、遊技機調整技術部長などを歴任したのち、株式会社エンタテインメントビジネス総合研究所入社。2012年、40歳となったことを機に起業。細やかな調整技術と正確な計数管理力で、勘や経験に頼らない論理的なホール経営を提唱する。著書に「ジリ貧パチンコホール 復活プロジェクト」(幻冬舎)がある。

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